「こんな間違った戦争は、早く終わってほしい。」
これは昭和18年、ある少年航空兵が出撃の前日、日記に記した言葉です。彼は愛知一中の三年生の時に志願し、少年航空兵となったその年戦死しました。
実話を基にしたテレビドラマの一場面です。愛知一中で海軍の飛行兵を募集したところ、三・四・五年生の全員が志願したという事件です。日記を残した少年は、実は志願したくなかったけれども、教員や上級生により無理やり志願させられてしまいます。無理強いした上級生の多くは、志願したにもかかわらず辞退したりして生き延びます。
このドラマをはじめとして、今年は例年よりもたくさんのドラマやドキュメンタリーが放送されています。しかもそのほとんどはこのドラマのように、「間違った戦争だった」 という明確なメッセージを伝えています。この「戦争」とは、太平洋戦争または1931年の満州事変以降の15年戦争です。
なぜ例年になく、「戦争」を否定する番組が多いのか。それは昨年の民主党内閣の誕生が大きく影響しています。
日本国憲法に記された「言論の自由」が回復され、自民党の「言論統制」から解放された結果です。
以前、NHKが従軍慰安婦の問題をドキュメンタリー番組にしようとしました。これを、当時自民党の中枢にいた安倍晋三氏、麻生太郎氏、中川昭一氏らがNHKの幹部に「放送するな」と圧力をかけ、放送中止に追い込んだという事件がありました。ただし、安倍氏らは否定しています。
テレビも新聞も、「戦争」について、かなりはっきりと否定した論調で踏み込んでいます。これは大変好ましいことだと思います。
85歳を超えた元兵士たちが、玉砕したアッツ島は大本営から全く見捨てられていたという話をしたり、中国で女性を輪姦したのち、その女性の連れていた赤ん坊を崖から投げ落としたら女性も身投げしたという話をしたり。戦後65年以上たって、ようやく語ることの出来た真実です。
こういう真実を、突きつけられて「あの戦争は正しかった戦争だ」と言える人はいないのではないでしょうか。
終戦直前には原子爆弾が2発も投下され、民間人にも多くの犠牲がでました。このような戦争が、正しい戦争だったと言えるはずはありません。
まちがっていたことを、真実だと受け止めること。
それこそが最も勇気がいる、そして最も大事なことではないかと思います。