8月1日の未明。ふと目が覚めてすぐにテレビをつけると、若い男性が三人肩を組んで並んでいました。眠い目をこすりながら誰かと確認すると、真ん中は体操の内村航平選手でした。内村選手の胸には金メダルが輝いていました。体操の個人総合で優勝したのでした。
おめでとう、内村選手。
今回のオリンピックは、「個人よりも団体の金がほしい」と明言していた内村選手は、あえて重圧を背負うかのようでした。彼は、常にチームのことを考えていたようです。怪我をした山村選手を気づかい、また自らも失敗しながら、次の演技で取り戻すのだという決意が感じ取れ、その姿勢はいつも前向きでした。
優勝のインタビューで彼はこう言いました。
「応援してくれた皆さんや、国民の皆さんのためにも、強い気持ちで演技しなければ。
その気持ちが演技に出て良かった」
「国民のために」とは、昔のスポーツ選手の感覚です。今風の若者が、なぜ国民のために闘ったのか。それは、東日本の大震災で被災した、子供たちのもとを彼が訪れて、一緒に体操をしたり、記念撮影に応じたりして慰問したことが大きいと思います。たいへんな回数だったでしょう。
激励される中で、被災した皆さんや子供たちのために勝たなければいけないと、心に決めたのでしょう。
個人総合の跳馬の着地は、ぴたりと決まっていました。まるで神業です。内村選手は、自分の中にもうひとりの自分がいて、身体を操っているようだと述べています。人並みはずれた、すぐれた感覚の持ち主です。
また跳馬の着地の時に、子供たちが支えてくれたのかもしれません。それが、国民の皆さんのために勝つんだという決意につながったと思います。
たくさんの国民が、彼の勝利に大いに勇気づけられたことでしょう。素晴らしい金メダルだと思います。