その交通事故が発生したのは、平成25年5月17日午前0時35分頃。場所は西区、平和大通りの東観音交差点でした。
たまたまその交差点に居合わせた二名の一般市民、AさんとBさんの目撃証言です。
東から西に進んでいた個人タクシーが、平和大通りを北から南へ横断していた男性をはねました。横断歩道でない場所だったこと、さらに赤信号で(タクシーにとっては青信号)渡っていたので、男性ははねられてしまったのです。
男性はころころと転がって、歩道から二番目の車線の横断歩道上に倒れました。間もなく起き上がり、あぐらをかいて座りこみましたが立ち上がる様子がありません。
タクシーは現場からすこし左に進んだ車道に停車しましたが、男性は路上に座ったままです。このままでは、続々とやって来る後続車に轢かれるかもしれません。
そこでAさんは自転車のライトを外し、車道上に出て男性の前に立ちました。そして後続車に向かってライトを振り、男性を避けるように誘導したのです。
男性は歩道から二番目の車線に座っていたので、Aさんは二番目の車線の男性から十数メートル東寄りに立って誘導し続けました。
Bさんは携帯電話で119番通報し、現場がどこなのか正確に伝えました。その後はAさんとともに誘導をしていました。
通報から10分ほどで、救急車が東側からやってきました。N消防署管内のE出張所の救急隊でした。
救急車は路上にいるAさんとBさんの左側をすり抜けて、一番歩道寄りの車線を直進し、横断歩道の2メートルほど手前で停車しました。2名の隊員が降りてきて、男性のところに近づきました。しかし、男性は助け起こそうとする隊員の手を払いのけ、大声で 「ええけ、ほっといてくれ」 と叫び、その場から動こうとしませんでした。
その間もAさんは車道上に立って後続車を誘導し、隊員の救急活動を支援していました。しかし、2名の救急隊員は、Aさんの活動に全く気が付いていませんでした。
隊員が男性の保護に手間取っている間に、隊員の一人が救急車の車内から強力ライトを取り出し、男性の前から後続車に向けて照射しました。
ちょうどその時、西側からパトカーが事故現場を通りかかりました。隊員の一人が これを呼び止め、現場へ向けUターンさせ、歩道から2車線目に停車させました。
男性は、ここでようやく後続車からガードされる形となりました。
警察官の説得で男性はようやく立ち上がり、歩道上に進みました。その時にはAさんは現場を立ち去っていました。パトカーの到着が0時55分、男性が歩道へ移動したのが1時05分でした。
救急隊員は、現場に到着した0時46分からパトカーの着いた0時55分までの9分間、AさんとBさんを路上に立たせたまま二人の生命を危機にさらし続けました。
一方のAさんとBさんは、事故発生直後の0時35分からパトカーが到着した0時55分まで20分間、自らの危険をかえりみず、男性の生命を守りました。
さらに、本来は市民の生命を守るべき存在である救急隊員の生命をも守りました。
この話を聞いて、わたしは消防局の尾形昌克救急部長に事実関係を詳細に調査して報告してくださいと求めました。
この報告が波紋を呼ぶことになります。
タクシーのタイヤ痕
(つづく)