マツダスタジアムの外野席、カープファンの先輩とタイガースファンの後輩が観戦しています。
試合はタイガースの大量リードで終盤を迎えます。
「7回の表、阪神タイガースの攻撃です。阪神ファンのみなさま、どうぞご声援ください。」
六甲おろしの前奏が流れます。
阪神の大量リードでやけになった先輩、応援歌を阪神の応援団と一緒に歌い始めました。
「六甲おろしに、さっそうと
蒼天かけるー 日輪のー」
「二番も歌うぞー
鉄腕きょうだー いくちたびー
鍛えてここにー 甲子園」
二番以降の歌詞を知らない後輩は、スマホで確認しています。それにかまわず歌う先輩。
「獣王の意気たからかにー」
「先輩、さっきの歌詞は三番ですよ。
そこは二番です。」
かまわず歌い続ける先輩。
「輝くわれらぞ」
「そこは三番です。」
「オウオウオウオウ 大阪タイガース
フレフレフレー。」
「二番の最初は、刺すという字です。」
「わかった。
闘志溌剌 たつやいまー
熱血すでにー 敵をつうくー」
「勝利にー 燃える栄冠わー」
「全然だめです。そこは三番です。」
「無敵の我がなぞ 大阪タイガース
オウオウオウオウ 大阪タイガース
フレフレフレフレー」
(注:オリジナルの歌詞は大阪タイガース。六甲おろしが作られた時期のチーム名です。)
応援歌を歌っている間に、カープは反撃の兆しも見せず、試合はそのままタイガースの勝利に終わりました。
「刺すと溌剌(はつらつ)の剌(らつ)は、字が違うのではないか。」
せめて先輩はカープに代わって後輩に反撃できればよかったのですが、それに気付いたのはゲームセットの後。
完全な敗北を喫した広島カープでした。