2010年2月14日日曜日

灰色のブーツ

 暦の上では立春が過ぎましたが、寒い日が続いています。デパートで働く友人は、

「三寒四温といいますからね」

と四字熟語を持ち出してきました。
 店頭には冬物がセール品の棚にある一方、春物がたくさん店頭を飾っています。寒いか暖かいかによって服の売れ行きも変わり、売れる商品の種類も変わってくるそうです。

 春物の服を買い始めましたが、靴も春色を探していたところ、店頭で人形が履いている灰色のブーツに目が留まりました。灰色と黒のコンビで、つま先からかかとにかけて、濃い灰色からだんだん淡くなるというデザインです。友人も薦めてくれたので買って帰りました。

 夜、あらためて履いてみようと思ったので、ブーツに左足を通そうとしました。しかし、つま先から10センチのところで引っかかって入りません。左だけでなく右も同じく、つま先から10センチのところから引っかかって入りません。
 ジャストサイズで買ったから、夜は足がむくんでしまって入らないのか、それとも昼間とは違って分厚いソックスを履いているから入らないのか。それにしてもジャストサイズとは微妙なサイズなものだと感心し、その日に履くことは諦めて寝たのでした。

 翌朝、足も締まったと思い、ソックスも薄手のものに履き替えて再度挑戦しました。
 しかし、昨日の再現VTRを見るように、左足はつま先から10センチのところで引っかかります。当然右も同じです。

「えーっ、こりゃマジで返品かー。店では楽に入ったのに。」

 心の中で叫びました。しかし、「いやちょっと待て、何か入ってるのではないか」と思い、ブーツに手を入れました。
指先に柔らかい感触。出てきたのは、靴の型を保つために入っている風船でした。見たことは何度もありますが、入ったまま靴を履いたのは初めての経験でした。

 前日の夜、なぜあっさり納得してしまったのかが不思議です。気付かないまま返品に行ったら、大変恥ずかしい思いをするところでした。
 この状況を表す四字熟語があります。

「危機一髪」