プロ野球が開幕して、一気にシーズン到来です。今年もたくさんの野球ファンが球場に詰め掛けることでしょう。
野球を扱った映画は、ヤンキースのルー・ゲーリッグを主人公にした「打撃王」、日本では巨人の沢村栄治投手の「甦る熱球」などが有名です。
昨年の12月に、陪審員制度を描いた「12人の怒れる男」という映画を紹介しました。ヤンキースの試合が見たいために、表決を有罪から無罪にころっと変えてしまう陪審員の話です。
もうひとつ、私が忘れられない映画があります。精神病院の閉鎖病棟を舞台にした映画「カッコーの巣の上で」です。主演はジャック・ニコルソンでした。
逮捕された凶悪犯マクマーフィーは、刑務所での強制労働を避けるため、狂人を装って精神病院の閉鎖病棟に入院します。そこでは病棟婦長が全権を握り、患者はしょぼくれて過ごしています。
毎日が退屈だったマクマーフィーは、野球のワールドシリーズをテレビ観戦しようと提案するのですが、賛成者が少なく退けられます。そこでマクマーフィーは、ひとりひとりに賛成を取り付けました。しかし婦長は、ミーティングに参加していない慢性患者も1票持っているから、過半数には達しないと再度退けます。
怒ったマクマーフィーは、ネイティブアメリカンのチーフが手を上げているのを指差し、過半数だと主張します。ちなみにチーフは野球を見たかったわけではなく、ネイティブアメリカンの慣習で手を上げていただけでしたが、マクマーフィーは見たがっていると主張したのでした。
すると今度は「時間切れだ、会議は終了した」と婦長が拒否し、テレビを見せようとしません。
この仕打ちにマクマーフィーは怒りを抑えて、テレビの前に陣取ります。やけになったマクマーフィーは、何も映っていないテレビの画面に向かって、大きな声を上げ始めました。日本語でいうとこんな調子です。
「ピッチャー振りかぶって投げた。4番の栗原、打った!!打球は転々と右中間を破った!!三塁ランナー東出ホームイン。二塁ランナーの小窪もホームインだ。栗原は二塁を回って三塁へスライディング!セーフ!!セーフ!!カープ逆転だ!ジャイアンツを逆転しました!!」
これにつられて、周りの患者たちも熱中してテレビに見入るというシーンです。
この映画は閉鎖病棟の非人間性を描いた秀作です。この一場面だけですが、野球を扱ったシーンが登場します。
野球ファンである私にとって、こたえられない映画のひとつになっています。