長谷川等伯展を見に、京都に行ってきました。
私は小学校の時、切手を集めていました。国宝シリーズという切手が発行され、安土桃山時代の切手の一枚が、絵師長谷川等伯の「松林図屏風」でした。この水墨画は、霧の中に煙る松林を描いたものです。
御用絵師だった等伯は、豊臣秀吉の求めに応じて、金碧障壁画 「楓図壁貼付」 「松に秋草図屏風」 を豪快に描いています。京都国立博物館で見た実物は、写真で見たほどはぴかぴかと光ってはいませんでした。しかし、400年前はさぞや光り輝いていたことでしょう。
秀吉の時代、夜の闇を照らすものは行灯かろうそくでした。そこで夜を昼のように彩るために、絵師たちに金ぴかの障壁画を書かせたそうです。
同じ御用絵師である、狩野永徳らをはじめとする狩野派との闘争の中、等伯は息子久蔵を病で失います。
その衝撃を乗り越えて、等伯は一転水墨画の傑作「松林図屏風」を残しました。故郷である能登の松林を描いた等伯の心情は、他の誰にも計り知れないのではないでしょうか。
私はこの絵の前で、一番長くたたずんでいました。感想の言葉が出てきませんが、40年目にして初めて目の当たりにした、この不気味な絵を一生忘れないでしょう。