ジャン・ギャバンは、フランスの生んだ名優です。ご存知の方は少ないと思いますが、アメリカのゲーリー・クーパー、日本の阪東妻三郎(田村正和の父)と並んで世界三大スターと呼ばれています。
ギャバンの代表作は、「望郷」です。
ギャバンが扮するのは、強盗団のボス「ペペ・ル・モコ」。フランス中を荒らしまわった末、アルジェリアのアルジェに潜入します。ペペはアルジェのカスバを根城に、犯罪を繰り返します。
カスバはアルジェの旧市街で、イスラム時代の城塞です。道はまるで迷路のよう、しかも屋根づたいに移動することが出来ます。警察が手入れに入っても、ペペはやすやすと逃げてしまいます。
そんな中、ペペはパリからの女性客・ギャビーに一目惚れしてしまいます。ペペは、ギャビーと一緒にパリへ戻ることを夢見ます。
しかし、ギャビーは連れの男性とともに船でパリに戻ることになります。警部・スリマンは、スパイを使ってペペをカスバから港へおびき出そうとします。
ペペの情婦・イネスは、ペペを手放したくない一心で港まで追いかけます。イネスに会ったスリマンは、ペペがギャビーを訪ねて港に下りてきたことを聞き出します。ついに、ペペはギャビーの乗った船のデッキで逮捕されます。
ペペは船から降ろされますが、最後に船出を見送ります。その時ギャビーが甲板に現れ、それを見たペぺは「ギャビー!」と叫びます。
しかし同時に出帆を告げる汽笛が鳴り、ギャビーは耳を押さえて船室に戻ります。
全ての望みを失ったペペは自殺してしまいます。
暗い穴倉のようなカスバから脱出し、花のようなパリに戻ることを夢見たペペ。
それなりに安定はしているけれども、明るい日々だと実感できていない。そんな男性は、この映画に大きな共感を抱くのではないでしょうか。