NHKの衛星放送では、ブロードウェイ・ミュージカルを放送しています。演劇やミュージカルの優秀作品に与えられるのがトニー賞で、先日は2010年にトニー賞を受賞した「メンフィス」を見ました。
さすがに、ニューヨークのブロードウェイのトップスターたちの共演は、素晴らしいものがありました。特に、ダンスのダイナミックさには魅了されました。激しい動きのみなもとは、鍛えられた肉体です。どの俳優も筋肉の付き方が半端ではありません。
ストーリーの展開は他愛も無いものでした。人種差別の激しいテネシー州のメンフィスで、白人男性のディスクジョッキーと黒人女性の歌手とが、差別や偏見にさらされながらも強く生きていくという話です。
フィナーレでは、成功した歌手がメンフィスでリサイタルを開きます。そこにディスクジョッキーが飛び入りで歌い、ステージを盛り上げます。
途中の複雑ないきさつはさておいて、ハッピーエンドで終わります。どうやらアメリカのミュージカルや映画などは、こういう楽観的なパターンが多いようです。
一方、フランス映画はラストで主人公が死んだり、主人公の彼女が死んだり、非常に悲観的な終わり方をします。以前このブログでも紹介した「望郷」では、主役のジャン・ギャバンが自殺して終わります。「ヘッドライト」では、ギャバンの恋人役のフランソワーズ・アルヌールが病気で死にます。
イタリア映画はというと、今辛くても明日があるというメッセージの映画が多く見受けられました。
「ブーベの恋人」では、ヒロインのブーベ(ジョージ・チャキリス)が、殺人犯となって獄につながれます。映画の後半は婚約者(クラウディア・カルディナーレ)が、牢獄に通う場面が延々と映ります。
「出獄するあてもないのに、どうしてそんなに通うんだ。」という問いに、婚約者はこう答えます。
「私は、ブーベの恋人だから。」
映画はここで終わります。今は絶望していても、きっと将来は開けるという話です。
最後にロシアの小話を紹介します。
ベルリンの壁の崩壊後、インフレが厳しい時代の話です。
「今日も厳しい日だったなあ。」
「ああ、本当に厳しい一日だった。でもさ、あの日よりゃましだ。」
「あの日って、一体いつのことだ。」
「明日だ。」