2012年5月23日水曜日

相撲

文部科学省は、平成20年3月に中学校の学習指導要領を改訂し、平成24年度より武道の必修を義務付けました。これによって、各校は柔道、剣道、相撲の中から一つ選ぶことになります。

 突然の決定で、各中学校の校長や教頭、保健体育の教師は大いに戸惑っていると聞いています。さらに柔道は死亡事故が抜きん出て多い、などとマスコミで報道され、広島市議会でも「柔道を教えることは危ないのではないか」との質問がされました。

 これに対して広島市教育委員会の首脳は、「礼儀作法と受身だけ学べばよい」と発言しておりました。武道の時間は1年間に10時間しか無いため、柔道の大技である大外刈り、体落とし、内股などは教えられないようです。

 広島市立の中学校は64校あり、柔道と剣道をほぼ半数ずつ選びました。24年度の秋から冬にかけて始めるそうです。

 私は、「なぜ相撲を選ばないのか」と、尾形完治・教育長や森川康男・スポーツ教育担当課長に尋ねました。
 返答は「中学校の自主性に任せている。」でした。

 しかし、さらに聞いてみると、柔道や剣道の講習はそれぞれ数回行っているが、相撲は一度も開催していないことがわかりました。
 私は何となく相撲を忌避する空気を感じ、相撲で死亡事故があったとは聞いたことが無いと説明しました。

 「2千年の間に死亡例はわずかに二つ。これほど安全な武道はありません。」

 日本書紀によると、神武天皇から数えて9代目の垂仁(すいにん)天皇の御代に、当麻蹴速(たいまの けはや)と野見宿禰(のみの すくね)が対戦し、宿禰が蹴速を投げ倒した上、肋骨と腰骨を蹴って殺したと伝わっています。
 江戸時代の講談、「寛政力士伝」では、当時無敵を誇った大関・雷電為右衛門(らいでん ためえもん)が、愛弟子の越の海勇蔵(こしのうみ ゆうぞう)を暗殺した四海波(しかいなみ)を、土俵上で投げ殺したと伝えられています。
 他の例をつぶさに調査したわけではありませんが、競技中の死亡事故は他に聞いた事がありません。

 学習指導要領には、勝敗のつく醍醐味も教えよという記述もあります。
 礼に始まって礼に終わる。そして一瞬で決着がつく相撲は、中学校の武道に最もふさわしいと思います。