本格的な相撲の稽古を見るため、鳥取市の鳥取城北高校まで行ってきました。新幹線と智頭急行を乗り継いで、鳥取駅まで片道3時間。駅から学校まではバスで20分でした。
鳥取城北高校は開学50年を迎える伝統ある学校で、校訓は「質実剛毅」です。
学校に到着すると校長の山根先生が、笑顔で迎えてくれました。玄関には、卒業生のパネルや各種大会での優勝カップが並べられ壮観でした。
野球部は、元カープの川口明久投手、現役は阪神の能見篤史投手、西武の藤原良平投手がOBです。
相撲部OBには元大関の琴光喜がいます。琴光喜は本名を田宮といって、山根先生は「本当に田宮は純粋で、良い生徒だった」と思い出を語ってくださいました。
相撲部長の石浦教頭先生は、15年ほど前から始めたスカウト活動や、モンゴルに行ってモンゴル相撲の学生王者を城北高校に招き入れたいきさつなどを、生徒指導などで忙しい中語ってくださいました。
16時から校内の相撲場に入って、稽古の見学です。土俵は2面あり本格的に俵が埋めてありました。上がり座敷で見学しましたが、大相撲の部屋の稽古場と全く同じ構造でした。
5名くらいが一緒に入ることの出来るお風呂、練習後に夕食を一緒に稽古場で食べるための台所もあります。
練習は16時から19時までの3時間。土日は午前中に稽古をします。全員が近所で合宿しており、夕食と朝食は稽古場で一緒に食べます。
部員は15、6名ほどでしたが、まず摺り足をやっていました。立会いの姿勢から、背中を丸く脇を締め、両手に重心をかけて前進します。このとき足の裏は地面に付けたまま前へ摺らせます。そのため線路のような二本のラインが、土俵に残ります。この摺り足だけで1時間と10分費やしました。
ついで、摺り足のまま立会いから突進する稽古。一歩目の踏み込みを速くと指導されていました。
17時半から申し合いです。対戦して勝った生徒はそのまま土俵に残り、次の相手と対戦します。3年生から1年生まで、全員で土俵の周囲に立って対戦を見守ります。
モンゴルからの留学生で高校3年生の生徒が飛びぬけて強く、右差し左上手を取ると休まず前へ出ます。この時の寄り足が速く、素晴らしい実力です。
8月の全国高校相撲選手権大会へ相撲部一丸となっての稽古に、石浦先生やレンツェンドルジ先生は、つきっきりでコーチします。
「足を送って」 「押して押して」 「前へ出ろ」 「チャンスチャンス」 と、絶えず声をかけます。
石浦先生は「負けた相撲の中に反省がある。それを直せ」とたびたび言っておられました。
生徒が「はい、分かりました。」と言うまで、「どうだ、分かったか」と念を押して、返事を待つ姿勢に感銘を受けました。
私が感動したのは、相撲部の部員だけでなく、全校生徒が私に挨拶をしてくれたことです。
グラウンドでは、野球部、サッカー部、陸上部の部員たち。そして廊下をすれ違う生徒たちも、みんな大きな声で「こんにちは」と挨拶してくれました。稽古中に稽古場へ入ってくるコーチの皆さんも、まわし姿になったあと私のところに来て「こんにちは」と挨拶してくれました。
授業での武道必修化は、礼儀作法を身に付けるということです。鳥取城北高校の生徒たちは、すでにその礼儀作法を身に付けており、立派でした。学校全体が明るく、前を向いていると感じました。
広島市の教育委員会の幹部の皆さんに、この見学の報告をします。広島市の学校教育の一助になればと思います。