2010年6月12日土曜日

パチンコ教室

 ある家族の話です。


 新聞の朝刊には毎日のように分厚い広告が折り込まれていますが、父親はほとんど目を通しません。それに対して、母親はスーパーの広告などをわりと丹念にチェックし、買い物の際に持参することもあります。
 父親が朝刊を読んでいると、母親が尋ねました。
「パチンコ教室って、お金がかかるんですか?」
 父親は紙面を見ながら
「そりゃぁかかるじゃろう。ようけ月謝を払ったという人が多いけぇ。でも好きな人は多いし、楽しいじゃろう。」
 と答えました。

 父親は「へぇ~」と感心しました。カルチャーセンターや公民館で、パチンコのプロの人が初心者や地域のお年寄りに、有償で技術を教えるのかと思ったからです。パチンコも熱中すれば面白いだろうし、頭の回転も良くなるんだろう。そこまで文化として成熟したのかと思いました。

「そう、面白そうね。習いにいこうかしら。」
パチンコについて素人の母親はそう答えました。父親は紙面から目を離し、ふとテーブルの上のチラシを見ました。

「パソコン教室、生徒募集」

大きな字で書いてあります。
「パチンコじゃのぅてパソコンじゃないか。」
 そう父親が言うと、母親は
「あら?そうですか。なんだ、つまらない。」
 と、恥ずかしがる様子もなく答えました。

 珍しい読み違えをする母親と、パチンコ教室に疑問を抱かなかった父親の会話でした。