2013年12月16日月曜日

広島市映像文化ライブラリー(その二)

 前回の続きです。

 清水正剛館長は、ほとんどわたしの提案を受け入れてくれました。

1.一階のフロアーに待ち合い用の椅子をおくこと。
2.上映1時間よりも前に来られたお客様には、窓口で入場券を販売すること。
3.図書館の2階の廊下から、ライブラリーの2階の受付に来られた場合、1階の職員が2階に上がってきて、入場券を販売すること。
4.映画の開始前には上映される映画の説明を学芸員がおこない、あわせて静かに鑑賞するようお願いすること。
5.騒がしいお客様には、館員が適宜注意すること

などが決められました。

 さて、実際に鑑賞です。
 12月15日の日曜日、14時から無声映画「滝の白糸」の上映、弁士は斎藤裕子さんです。お年寄りを中心にかなりの入りで、中には若い男性の姿もありました。

 学芸員の作品紹介につづいて、斎藤裕子さんによる解説です。主演の入江たか子は昭和8年当時としては珍しい八頭身美人で、水着のグラビアも残しています。相手役の岡田時彦は、女優の岡田茉莉子の父親です。

 斎藤さんの名調子で映画が始まりました。水芸人の滝の白糸(入江)が、貧しいながらも法曹界をめざす村越欣也(岡田)と愛を語る、金沢の浅野川の畔です。流れる音楽はメリー・ウィドウ・ワルツ。 白糸は不遇の欣也に、仕送りをして学業を支えると誓います。

 それから三年。水芸もいきづまり、高利貸しに身体を任せて借りた300万円。これを高利貸しの手先に強奪され、白糸は高利貸しの屋敷に戻り、これを刺殺してしまうのです。白糸は逮捕され出廷させられます。そこへ検事代理として現れたのが欣也です。その立派な姿を見て、白糸は満足するのでした。

 罪状を告白し、欣也から強盗殺人の罪を告げられた白糸は、その場で自殺して果てます。恩人とも言うべき白糸を裁かなければならなかった欣也は、自分のために白糸が人殺しをしてまで仕送りを続けたことに自責の念を抱き、浅野川の畔で拳銃自殺をとげるのです。

 

 白糸が高利貸しを殺害したのち、欣也に会うため上京し下宿を訪ねる場面があります。欣也は留守でしたが、お婆さんから、「いつも姉さんが、仕送りを送ってくれるんだ。お姉さんのためにも早く卒業して、勤めに出られるようにならないと」といつも言われてましたと聞き、白糸は満足そうに涙を流します。

 わたしはこの映画では何度か泣きましたが、この場面は泣けて泣けてしかたがありませんでした。わたしもつらい思いをして、二人の子どもを県外の大学にやりました。子どもたちも欣也のように感謝してくれていると思うと白糸のように泣けてきました。

 ラストシーンでエンドマークが流れます。
 弁士の斎藤さんが名調子で「泉鏡花原作、溝口健二監督、滝の白糸一巻のおわりでございます。」
 わたしは、割れんばかりの拍手を送りました。場内の観客も、また割れんばかりの拍手でした。斎藤さんも学芸員も喜んでいました。

 無声映画で活弁が付くなど、商業映画館ではとても望めないサービスです。
 ライブラリーのこれからの奮闘に期待します。